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マーケティングLab

2020.12.03

【続・緊急提言】2021年も勝ち続けるスーパーマーケットとは~コロナ禍を乗り切るマーケティング戦略

コロナ禍に人口減少…かつてない難局に「顧客支持」を得るには?

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年4月に「【緊急提言】コロナがスーパーマーケットにもたらしたもの~いま店舗がやるべきこととは」と題した記事を公開したところ、思いがけず多くのビジネスパーソンに拝読いただき、参考になったなどのありがたい感想やご意見も頂戴しました。

この記事は、2020年4月7日に7都府県を対象として特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令され、4月16日には対象が全国へ拡大したまさにそのタイミングでまとめたものでしたが、あれから半年以上が過ぎて「新しい生活様式」もすっかり習慣化した今、スーパーマーケットは今後のマーケティング戦略をどのように準備すべきなのか? 改めて持論をまとめてみたいと思います。

言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大は社会に大きな変化をもたらしました。コロナ禍により撤退を余儀なくされたサービスや業態もあり、状況は依然として先行き不透明です。逆にスーパーマーケットを始めとして、コロナ禍で特需を得た業種にとっても、収束の目途が立たない中でのコロナウイルスとの共生は悩ましい課題であり、さらにコロナ後の反動減に対しても戦々恐々としていることでしょう。年末年始の過ごし方の変容および年明けの動向に対して、経営環境を厳しく想定している企業も目立ちます。

また、あらゆる産業において影響のインパクトが大きい人口減少・少子高齢化問題についても、全国的な減少傾向の中で、増え続けていた東京の人口がコロナ禍によって減少に転じています。これは感染拡大で転入を控える動きに加えて、リモートワークの広まりで地方へ移る動きが合わさったものと言われています。こうしたコロナ禍における移動自粛や地方移住がもたらすさまざまな変化についても、しっかり捉えておかなければなりません。

かつてないほどの難局とも言える現状に対して、スーパーマーケットは今後どんな心構えで立ち向かうべきなのか? かねてより私は、競争優位の源泉は何より「顧客の支持」にあると考えていますが、そのためには

1)組織としてのビジョン、ポジショニングを明確にすること
2)差別化されたアプローチを徹底することで、顧客の支持獲得を競い合うこと
3)そして1)2)を検証し、戦略の見直し・修正を繰り返すこと

この3つの方針によって、変化に対応し得る「経営戦略」と「マーケティング発想の競争戦略」を描くことが重要と考えています。

ワークマン式「しない経営」とオンラインコミュニティ「QON」に学ぶ

いま話題のワークマン・土屋専務の『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社)からは、多くのヒントが得られます。詳しくはぜひ一読をお薦めしたいのですが、ワークマンが貫いているのは本のタイトルにもなっている「しない経営」。と言っても、決して「する」ことを否定しているわけでなく、あえて「しない」ことを肯定し、「何をせず、何をすべきか」を明確にしながら「やるべきことに集中する経営」を徹底しようというのがその趣旨です。

いちばん大事なのは“徹底”すること。そして、失敗したらあっさりと止めてしまう“素早い判断力”の重要性など、土屋専務が紹介されているワークマンのマネジメントやリーダーシップなどの組織論は、コロナ禍~コロナ後の経営に大いに役立つ、示唆に富んだ内容と言えるでしょう。
例えばワークマンの好業績を支えているのは「商品力や価格よりも前に、事実データに基づいた意思決定にある」と述べている箇所では、

・数字による議論で憶測や無駄を排除し、効率化を図ること
・データによって商品力の優劣と価格の妥当性を定義すること
・事実に基づいたコミュニケーションによって、形式知として組織に根付かせること

これらを実現できる組織が売れる商品を生むとおっしゃっています。こうした発想はまさに組織論ですね。

ただ一点、本書で「しない経営」の一例として、土屋専務は「当社はマスマーケティングが基本であり、顧客管理はしない」「“名前のないお客様”に売れたら十分。お客様を名前で管理しようとすると費用がかかる」と述べられていますが、果たしてワークマンの実態はどうでしょうか。
「ワークマンプラス」「ワークマン女子」「大人のワークマン」など、ワークマンではユニークかつセグメント化されたコミュニティにおける顧客価値体験に積極的に取り組まれており、SNSを活用して体験者のレコメンドを喚起する「ワークマンPhotoキャンペーン」が話題になったりと、買い手視点による顧客参加型の戦略展開がその人気を支える大きなポイントであると私は捉えています。

プロダクト起点の従来型マーケティングではなく、デジタルを駆使してコストやムダを克服しながら、個々の顧客接点によるパーソナルコミュニケーションを実現できるとすれば、マスマーケティングを「しない」経営にもぜひ挑戦いただけたらと個人的には思うところです。
(例えばコロナ禍において大きなダメージを受けた外食業界では、以前から顧客との直接的なデジタル接点を構築していた店舗が素早くテイクアウトやデリバリーを打ち出して難局を凌いだ例もあります)

こうしたデジタルのパーソナルコミュニケーションを実現するサービスとして、クラウド上のファンコミュニティ運営を支援する「QON(クオン)」が注目されています。「絆と売上は比例する」という考えのもと、独自の「“絆”のテクノロジー」“によってファンを育て、さらにファンになる理由を科学的に明らかにするサービスですが、コロナ禍における外出自粛により消費者との関係構築の「場」をこうしたオンラインへ移行する企業(特に製造業)は非常に増えています。コロナ禍の外出自粛が広がる中で、オンライン上でユーザーがコメントを書き込む件数が増加傾向にあったことを背景に、イベント・販売・商品開発などのマーケティング活動を維持・継続するために、各企業は顧客とのコミュニケーション機会をオンラインに見出したのです。

オンラインで生まれた「顧客との関係」はコロナ収束後においても引き続き維持され、今後も重要な事業資産と位置付けられていくでしょう。QONも引き続き、デジタル時代におけるLTV(LifeTimeValue)の向上とオープンイノベーション(価値共創)をもたらすD2Cプラットフォームとして、ますますその役割を期待されていくはずです。

顧客参加型の場づくりや機会の活性化がポイントとなる

フィリップ・コトラーも、マーケティング担当者のバイブルとも言われる著書『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』(朝日新聞出版の中で、「デジタル時代(=顧客と直接つながる時代)におけるマーケティング・ミックスの概念は、顧客参加型の『買い手視点』戦略に移行する」と述べています。

・デジタル経済においては顧客の声を直接聴き、企業と共に製品を創り上げる「共創」が新たな戦略となる。
・価格は、顧客の需給に基づいて絶えず変動する通貨となる(ダイナミックプライシング)。
・販売チャネルも既存の概念から大きく変化し、例えばデジタルプラットフォーム上でユーザー同士が直接つながり取引が行われる。欲しいものを即座に購入することができ、また他者が所有しているものをレンタルして使うこともできる。

…などなど、いずれも共同の場づくりや機会の活性化がポイントとなる考え方です。
コトラーはこうした戦略の変化によって、プロモーションの在り方も変化すると言います。従来のようにサービス提供者によるお仕着せの情報ありきでなく、ユーザーとサービス提供者・さらにはユーザー同士の対話によって生み出される肯定・否定を含むリアルな情報が購買を決定する選択の根拠となっていく。
重要なのはタッチポイント(ブランドやサービスとの顧客接点)を増やすことであり、顧客との有意義なコミュニティ(つながり)を築くこと。また顧客を取り巻くコミュニティが意思決定に作用することをしっかり理解した上で、顧客をブランドの忠実な推奨者に育成することがますます求められるだろうと述べています。

顧客との信頼関係を築き、地域コミュニティの使命を果たす

また関係性の視点でいうと、今回のコロナ禍では感染拡大対策について、行政と国民の意識のズレを感じざるを得ない場面が多く露呈しました。行政では生活者視点・消費者視点での意思決定がなされず、さらに施策が実施されるスピードの遅れも目立ったように感じます。
報道などでは、あらためて地元密着行政の重要性を訴える記事を多く目にしましたが、これはスーパーマーケットなど流通業にも置き換えられることでしょう。生活者・消費者との信頼関係の上で成り立つ小売業が起点となり、その店を利用する地域の人たちに支えられながら生活インフラとしての使命を果たす。このことが今、求められているように思います。
コトラーも「マーケティング4.0はリテール起点」と述べている通り、顧客との繋がりをベースにしたリテールマーケティングを地域に根差したローカルストア(チェーン)が主導することが、この難局を乗り越える1つの答えになるのではないでしょうか。

以前の記事にも書いたように、流通業では既に顕在化していながら目を背けていたさまざまな課題(人手不足やデジタル化の遅れなど)を抱えていましたが、それがコロナ禍によって改めて鮮明になったことで、特にデジタル化による革新の速度は想像以上に早まると期待しています。これまでの常識が覆り、新たな価値基準やマーケット発想を再検討しなければならないケースも出てくるでしょうが、改めて「差別化された経営戦略の徹底/浸透」と「顧客起点のマーケティング発想による戦略展開」を意識することが今後、競争優位の源泉となるはずです。
コロナ禍という不測の事態は、多くの企業やビジネスパーソンが新たなアイディアを模索・熟考・具現化することで、多くのイノベーションやパラダイムシフトが実現される絶好の機会になるとも言えます。2021年も驚くべきビジネスアイディアや顧客価値があふれることを、期待を持って予想したいと思います。

ちなみに私たちマーケティング・グラビティも、当社独自のメソッドによるファンづくりのためのプログラムを通じて、顧客起点のマーケティングを実現していく新サービス「生活者パネル事業」をスタートしました。
これはスーパーマーケットやドラッグストアなどで店舗を核とするコミュニティを形成し、そのお店を普段からよく利用している方々に“生活者パネル”として参加いただくことで、単にお買い物をするだけの関係から一歩進んだ密接なつながりを築きながら、コミュニティ内で生まれた“お客様の声”を店舗やメーカーへフィードバックし、商品・サービス・売場づくりの改善へ役立てていく。また一方でお客様視点においても、事業参画意識を醸成することで愛着度を高めつつ、お客様自らが発信源となって他の生活者へファンを広げていく。そんな一連の取り組みをパッケージ化したサービスです。
(詳しくはこちらの記事「当社の新サービス「生活者パネル事業」がスタート! その中身をデータ事業部・吉田が徹底解説します」をご覧ください)

コロナ禍~コロナ後の行動変容について一般的な調査結果はよく目にしますが、エリアや生活圏により生活者の意識や行動の変化・事情はさまざまです。私たちは地域固有の状況を見極めながら需要を創造していきたい、そして有機的なサイクルを継続的に展開することによって、企業のマーケティング活動を支援していけたらと考えています。もしご興味をいただけた方はぜひお問い合わせください。

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この記事を書いている人
米田敬太朗 / 調査分析部 部長
生活協同組合コープさっぽろでマーケティング実務に携わり、2017年にマーケティング・グラビティに入社。POSデータやパネルデータ分析に基づいた小売業界の戦略立案に取り組む。

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