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マーケティングLab

2020.04.22

【緊急提言】コロナがスーパーマーケットにもたらしたもの~いま店舗がやるべきこととは

従来のやり方に固執しない、変化に対応する「柔軟性」が求められている

新型コロナウイルスによる感染拡大を防止するため、リモートワークや学校休校など外出の自粛が国や行政から要請され、家で家族と過ごす時間が増えました。またウイルスへの感染予防と併せて、見えざる敵が故に自身がその発症源にならないよう外出を控えるとともに、必要火急の外出時にはマスクを着用するといった自粛行動が1ヵ月を経過して徐々に習慣化されつつあります。

こうした新型ウイルス対策の徹底によって生活者の行動範囲が制限され、その買い物行動も大きく変化していますが、閉塞感や不便さを感じる一方で、「人が減って、思ったよりも心地よい」「これまで多くの無駄があったことに気づいた」といったプラスの声もあるようです。いずれにせよ徐々に生活者が変化を受け入れ、習慣化されていくことによって今後、様々な産業において戦略の転換が必須となることは間違いありません。

中でも私たちが携わるスーパーマーケットやドラッグストアは、改めて暮らしを支える必要火急の存在と位置付けられたことで連日、多くの利用客が押し寄せています。大手ネットスーパーなどはキャパシティを超える受注が殺到し、申込み制限が掛かるほどの盛況です。

多くの小売企業は、2009年に流行した新型インフルエンザ時の経験を教訓として、それぞれに対処法などを準備していたはずですが、今回の事態は全く当時の比ではありませんでした。まさに戦後最大、これまで経験したことのない事態に対応すべく、改めて組織においては、①トップマネジメントの重要性(スピーディな判断) ②現場従業員の顧客視点による使命感にも近いサービス力 ③日々の変化に対応するマーケティング力の3つが問われています。

組織において「戦略の徹底」が重要なことは、先日のブログ記事(「安易なEDLP化」への警鐘~なぜ多くの小売業はEDLP戦略を採用したがるのか?)でも指摘させていただきましたが、現在のような不測の事態を目の当たりにすると、従来のやり方に固執することなく変化に対応する「柔軟性」も求められているのだと改めて実感しています。

今回の緊急事態により、既に顕在化しつつも目を背けていた課題が改めて鮮明になったように思います。また、これまでの常識が覆り、新たな価値基準やマーケット発想を再検討しなければならないケースも出てきました。前提が変われば戦略も見直す必要があるわけです。

すでに顕在化していた課題「人手不足」はますます深刻化。低価格化も進む

まずはすでに顕在化されている課題として、人手不足は今後ますます深刻となるでしょう。多くの来店客が押し寄せるリアル店舗も、オーバーキャパシティのネットスーパーも、その対応を人手で担うにはあまりに過酷であり、デジタル化の推進はいよいよ待ったなしです。

海外ではウォルマートもテスコもアマゾンも、急激に増加した需要に対応するため数万、数十万の雇用追加を発表しました。3社とも、世界でも先進的なデジタルシフトで有名な小売業ではありますが、この不測の事態を人手で凌ぐ判断をしているのです。ただ、人口減少かつ高齢化が急激に進む我が国において、人手の確保は容易ではありません。改めてオペレーションの全工程を見直し、人手によらないデジタル化を中心とするシステムを構築する必要があります。

その一方で、人によるサービスは店舗の差別化要素にもなり得ます。新型コロナウイルスに対して、アメリカのスーパーマーケットチェーン「Trader Joe’s」が実施している13項目の対策(下記参照)は非常に参考になりますが、特に従業員や顧客への対応は学ぶべき点が多いと思います。人手不足の克服に向けて、人がすべきこととシステムで補うべきことをしっかり整理する上で非常に役立つでしょう。

「Trader Joe’s」が実施している13項目の対策

・Crew Member Wellness Checks:従業員の体調管理
・Revising Store Hours for All Trader Joe’s Locations:営業時間の変更
・Prioritizing Good Hygiene Practices:適切な衛生管理の実施の優先度アップ
・Increasing Routine Cleanings:店舗清掃の強化
・Additional Paid-for Sick Time to All Crew Members:従業員の療養手当の追加
・Thank You Pay For All Crew Members:従業員への特別感謝金
・Introducing Practices to Support Social Distancing:社会的距離の維持に役立つベストプラクティスの共有
・Installing Plexiglass Barriers:防疫壁の設置
・Personal Protective Equipment For Crew Members:従業員の防護用具整備
・Continued Communication:タイムリーな情報共有
・Addressing Possible Exposure to The Virus In Our Stores:店内のウイルス汚染可能性に関する迅速な共有
・Keeping Our Stores Stocked with Great Values:上質な商品の確保
・Neighborhood Shares Donations:地域貢献、寄付など


また休業を余儀なくされている事業者や、仕事が激減して給与カットなどの被害にあわれている生活者には、国や行政からの助成など支援策が具体化されつつありますが、パンデミックの収束には1年ないし2年掛かるともいわれる中で先行きは不透明であり、生活者の節約意識はますます高まることが予測されます。低価格競争が今まで以上に激化することも予想されるため、こちらも先日のブログで指摘した戦略の徹底はますます重要となるでしょう。

今はまだ混乱期であり、スーパーマーケットやドラッグストアは積極的な販促や値引きを控えても売上は確保できます。そもそも需給調整がままならず、品薄状態を避けるために販促を仕掛けられない、さらには疲弊した現場がもたないという事情もあり、結果として販促費を抑制しながら売上/利益の確保ができているのではないでしょうか。

ただ、ある程度この事態が収束した頃には低価格化が想定以上に進み、販促の在り方(販促費の掛け方)の見直しが必要となるでしょう。低価格化はコスト削減とセットの議論であり、もちろん販促費も削減対象です。先ほど指摘したオペレーションの見直しとデジタル化の推進は必須となりますし、さらには価格以外の価値提供についてコストを掛けずにどのように実現するか、差別化された揺るがない顧客の支持をどのように得るのか、マーケティング発想の戦略を今の段階から実行すべきと考えます。

後述しますが、過去に採算が合わずに撤退が進んだネットスーパーは、今回の事態によって改めてその利用価値が上がると想定され、食品流通においてもDirect to Consumerの戦略が根付く機会にもなるでしょう。

POSデータに現れている変化の総点検を。しっかり対応しながら利益を確保しよう

そしてもう1つの視点として、今回の緊急事態によってこれまでになかったような新たな変化が見られるケースも出てきています。その一例が惣菜ですが、近年では核家族化や高齢単身世帯の増加、簡便化志向の高まりを背景に、各食品小売業はずっと惣菜の拡充を進めてきました。利益幅の低さが構造的課題となっているスーパーマーケットにおいて惣菜は比較的、粗利率が高く、収益構造の改善にもつながっていますが、コロナウイルスの感染拡大を受けて2月27日に小池百合子東京都知事が発表した「重大局面」のメッセージ以降、急激に惣菜の売上が下がっています。

自粛期限が定まらない中で、生活者の購買行動は「日持ちするもの」や「まとめ買い」に向かい、調味料やレトルト食品、冷凍食品など加工食品の需要が高まりました。また、毎日・毎食を自宅で過ごす「巣ごもり消費」によって、デイリー品の需要が増していますし、お菓子も自宅で過ごす重要アイテムとして伸びているカテゴリです。

一方で外出が制限されたことによって、行楽需要が激減。酒類の中でも特にビール類の落ち込みが顕著となり、他の飲料系でも特に500mlペットボトルの売上が落ちているそうです。ドライ品のまとめ買いに加え、米・パスタ・麺などがまとめ買いされる一方で、重量物かつ不要不急と思われた酒・飲料がそのあおりを受けているのかもしれません(ただ、ワインやスピリッツにはまだ影響が出ていないようですので、ホームユースを前面に露出することで反転する可能性もあります)。

加えて惣菜は衛生上の観点からも避ける消費者が増え、落ち込みに拍車をかけています。都市型のスーパーやコンビニでは、サラリーマンのリモートワークによる昼食需要減も大きな影響を及ぼしていますが、ただ一方で郊外型のスーパーなどでは、巣ごもり時の食事を簡便に済ますために弁当などの需要が上がっている店舗もあり、状況は一様ではありません。

リアル店舗では売上の下がったビール類など重量物がネットスーパーで買われているとのデータもありますし、かさばる日用品なども同様にネット購入が増え、その利便性を実感する人が増えているようです。

こうした各店それぞれに起きている様々な変化について、日々のPOSをチェックしながら購買分析を日常的に行っている店舗は、しっかり対応しながら利益を確保しています。しかし、そうでない店舗では「コロナ特需」によって売上は上がっているものの、思ったように利益が伸びないといった状況に陥っているところもあるようです。

先ほどの惣菜の例でも、コロナの影響が出る前と変わらず展開し続けた場合、以前より売れなくなった店ではオペレーションコスト+在庫リスクを抱えることになり、逆に以前より売上が伸びている店では機会ロスを招いて利益を逃しているかもしれません。今回の緊急事態によって、恐らく多くのスーパーマーケットで惣菜の売上額もしくは売上構成比に1~2%程度の変化が表れていると思いますが、惣菜は粗利率が高く、かつオペレーションコストの高いカテゴリであるが故に、その影響は他のカテゴリと比べてかなり大きいはずです。

酒類についても、リアル店舗では売り上げ減少を「花見など行楽自粛の影響」だけでとらえがちですが、前述のとおりビール類などの重量物はネット購入に流れている場合もあり(特に若い世代では「宅飲み」などオンライン飲み会もブームとなっています)、従来とは違う視点での分析が必要です。
いま挙げたようなカテゴリだけでなく、全カテゴリにおいてPOSデータに現れている変化を、これまでの常識にとらわれずに様々な視点から店別・チャネル別に総点検する必要があるでしょう。

 


次世代レジはスマートフォン端末が主流に?ネットスーパーへの移行も大きく進む

また他に、こんな変化も起きています。近年では、レジ待ちストレス解決のためにセルフレジやセミセルフレジを導入し、有人レジを大胆に削減する店舗が増えていますが、ここへきて、あえて有人レジを選ぶ利用客が増えているという話もあります。このたびの特需による利用客増に加え、ソーシャルディスタンスの推奨などもあって、さらに有人レジ削減の動きが加速すると思いきや、逆に不特定多数の人が触れるタッチパネルの画面操作が伴うセルフレジを避け、有人レジへ人が流れているというのです。

一方で今年に入ってレジ袋の有料化が本格的に始まり、エコバックの利用が推進されていますが、先ほど名前を挙げたアメリカの「Trader Joe’s」は、デザイン性や機能で人気を博しているオリジナルエコバッグが店の売りにもなっているにも関わらず、従業員への感染防止の観点から現在、エコバックの使用を禁止しています。国内においても多くの店舗で防疫用の「レジガード」が設置されるようになり、店舗スタッフの不安解消に取り組まれているようです。

新型ウイルスとの共生・長期化が見込まれる中、利用客と店舗スタッフ両方の不安を解決すること、また前述の通り、人手不足解消のためレジコスト削減にも繋がるようなテクノロジーを活用していくことは当社の役割でもあると考えています(当社が導入を進めているスマホ版ショピモもその1つです)。

さらにコロナは今後、ネットスーパーへの移行が大きく進むきっかけにもなるでしょう。今回の非常事態は、これまで食品に関してネット購入に抵抗感をもっていた人にとっても、間違いなく便利さを実感いただく機会になったわけですが、一方で注文集中によってオーバーキャパシティを引き起こし、利用制限をかけざるを得なくなるなど脆弱性も露呈しました。今後ネット展開を進めていくにあたっては、需給バランスに予測不可能な変数が加わったときの対応をしっかり見据えておく必要がありそうです。

ネット・リアルそれぞれの強みを活かす戦略が競争優位を生み出す

なお店舗のPOSデータを見ると、今のところ青果・精肉・鮮魚のカテゴリでは売れ行きに大きな影響を及ぼしてはおらず、ここはまだまだリアル店舗に分があるようです。リアル店舗においては、こうした生鮮品+リアルな接点を活かしたサービスに特化し、その強みをさらに磨いていく。そしてネットでは、その利便性を活かして個別最適のDirect to Consumer戦略を深化させていく。こうしてネット・リアルともにそれぞれの強みを活かしながら、利用者の購買行動や商品特性に加えて、パーソナルな利用シーンや気分、タイミングなどに寄り添い、全方位に包み込むことが小売としての競争優位を生み出すことになるはずです。
(ただし、装置ビジネスであるネットスーパーの物流網やオペレーションの最適化、効率化には相当の時間と労力が伴います。既参入企業との競争は容易でないことは覚悟してください)

これまで述べてきた通り、今回の新型コロナウイルス感染拡大がもたらした急激な行動変容は、これまで顕在化されつつあった課題がさらに浮き彫りになるケースと、一方で積み上げてきた価値観を180度変容させ新たな対応が求められているケースの両方が存在します。

この両方を見据えながら、いまスーパーマーケットがやるべきこととして、①生活者の行動をデータに即して把握し、なぜそのように行動しているのかの理由を客観的に解釈すること。そして、②自分たちが変えるべきこと・変えなくてよいことを、それぞれの店舗/チャネル/商品別に分けながら、冷静に分析すること。この2つのことを、改めてお勧めしたいと思います。

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この記事を書いている人
米田敬太朗 / 調査分析部 部長
生活協同組合コープさっぽろでマーケティング実務に携わり、2017年にマーケティング・グラビティに入社。POSデータやパネルデータ分析に基づいた小売業界の戦略立案に取り組む。

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