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マーケティングLab

2019.08.23

アメリカのデジタル施策は今どうなっている?【視察レポート】米国スーパーマーケットの店頭からvol.3

私が視察してきたアメリカ小売企業の様子をレポートしている「米国スーパーマーケットの店頭から」。第3回のテーマはデジタルです。

今回の視察で最大の目的は、いまアメリカの小売店舗で行われている「店頭デジタル施策」を調査してくることでした。どの店舗で、どのようなデジタル施策が展開されているのか? またそれが実際に買い物客に利用されているのかいないのか? 
行く前に想像していたのは、店頭で買い物客がアプリを積極的に利用している姿だったり、デジタルサイネージなどを駆使した最新店舗の姿でしたが、実際に私が目にしたものはそれとは少し異なる現地の姿でした。

1)驚くほど少なかった、店頭での「目に見える」デジタル施策

今回の視察先ではAmazonGoはもちろんのこと、Ralphs、Target、Walmart、Albertsons、Whole Foods、Walgreens、Smart&Finalなど、ほとんどの小売企業でスマホアプリが提供されており、機能としては主に電子クーポン/買い物リスト作成/スマホPOS/フロアナビゲーション/ピックアップ依頼/オンライン購買/ポイントリワード確認などが実装されていました。

例えばRalphsやAlbertsonsでは、アプリ利用者だけが特典を受けられるデジタルクーポン施策があり、店頭でもアプリ告知のPOPが大々的に掲げられていたり、デジタルクーポン専用のチラシが入口に設置されていたりなど、アプリユーザーを積極的に拡大していこうとしている姿勢が見て取れました。

Ralphsの店内。アプリへ誘導するPOPが、天井にいくつも掲げられています。
Ralphsの店舗内に置かれている、デジタルクーポン専用のチラシ。アプリ利用者のみが特典を受けられます。

また、Amazonが買収したオーガニックスーパーマーケットWhole Foodsでは、Amazonプライム会員だけがディスカウントを受けられる「プライムメンバーシップ特典対象品」が至るところに置かれており、レジでアプリを提示するだけで特典を利用することができます。

Whole Foodsでは、このような「プライムメンバーシップ特典対象品」が数多く用意されています。

Whole Foodsでは生鮮を除く、ほぼ全ての商品で電子棚札が採用されており、プライムメンバー対象品かどうかなどについても、買い物客が棚札の情報を通じてカンタンに把握できるようになっていました。

さらに、日本でもいくつか導入事例が出てきている「スマホPOSサービス」については、Walmartが展開する会員制大型店であるSam’s clubにて「Scan&Go」のアプリサービスが引き続き提供されていました。ただ、私が見た限りでは店内で同サービスを利用している買い物客はおらず、「Scan&Go」の専用会計レーンや店内での告知なども見かけませんでした。

Sam’s clubで利用できる「Scan&Go」。購入したい商品のバーコードをスマホでスキャン→お会計はアプリで決済するだけ。レジに並ばなくても済む便利なサービスです。

総じて今回視察した店舗ではそれぞれにスマホアプリを提供し、顧客に利用を呼びかけてはいるものの、店頭で実際に利用されている光景を見かけることはほぼ皆無でした。買い物客を見ていると、紙のメモを見ながら買い物している人や、スマホのビデオ通話などで奥さんに買うものを確認しながら買い物をしている人など、日本と同じような買い物シーンがまだまだ主流。デジタル先進国というイメージとは異なる姿が意外であり、印象的でした。

2)TargetやHome Depotにおける商品検索機能の進化

現状で利用している顧客はまだまだ少ないようですが、各小売のスマホアプリでは注目すべき機能もいくつかありましたのでご紹介します。

まずTARGETやHome Depotなどのホームセンター型の店舗では、広い店内でも買い物客が自分の欲しい商品や特売品を探しやすいようにと、スマホアプリに充実した棚位置検索機能が装備されていました。
TARGETのアプリでは、光ビーコンを利用した精密な店内位置ナビゲーションが提供されており、利用者の店内位置を20-30㎝単位で精密に測定しながらアプリ上にプロット。自分の探している商品やその周囲にある特売品なども、ピンポイントで表示されるしくみになっていました。

左画面は、より店内全体を俯瞰できる縮尺のフロアマップ。それを拡大したのが右画面で、商品の棚位置番号が確認できる大きさで現在位置近くのフロアマップが表示されています。
マップの中で、特典付き商品を示す「緑色のカートアイコン」をタップすると商品詳細ページへ。これをアプリで保存して対象品を買えば、ディスカウント特典が受けられるしくみです。

また、ホームセンター業界のリーディングカンパニーであり、デジタル投資においても常にマーケットリーダーであるHome Depotでは、3次元マップによる詳細なナビゲーション機能が提供されていました。

アメリカ最大の住宅リフォーム小売チェーンであり、世界有数の小売チェーンとして知られるThe Home Depot。
このナビゲーション機能では購入したい商品のバーコードをアプリでスキャンすると、該当商品が店内のどこに置かれているかという棚位置情報に加えて、いま店頭にある在庫数も表示。あらかじめアプリで来店前に調べておけば、商品が確実に購入できるかどうか判断がつくようになっています。

3)分厚いデータ基盤と多様な買い物アシストサービスへの展開

TARGETやHome Depotのアプリは棚位置情報まで把握できる点が非常にユニークですが、いま米国小売企業のスマホアプリで標準となっている機能を見ると、日本で提供されている「画一的なプッシュ型販促を中心に据えた小売各社のアプリ」と比較して、データ活用という点で異なった進化ステージにあることがわかります。

カリフォルニアを本社を構えるRalphsは米国を代表するスーパーマーケットの1つですが、同社のスマホアプリの買い物アシスト機能には、いま米国で提供されている小売りアプリにおける標準的な機能がほぼ揃っていますので、代表してそちらをご紹介します。

まず、商品購買に至る基本的な流れは以下のようになっています。

スマホアプリを使ってお買い物をする際の標準的な流れ。

次に具体的な画面の流れとして、バーコードによる商品検索から買い物リストへの追加に至る流れを見てみましょう。

実際の画面はこのような流れで進んでいきます。

これらのスマホアプリでは自宅やオフィスなど店舗外での利用シーンを想定し、来店前の段階から自然と来店またはオンライン購買に繋げるような流れを意識していることがわかります。
また商品バーコードによる検索や、過去に買った商品履歴からの再購入、店舗の棚位置情報を提供するなど、買い物プロセス全体で顧客の手間や時間を省き、お買い物にかかる時間やストレスを軽減するような工夫が随所に施されています。

さらに見逃せないのは、顧客に対して単に価格訴求するだけでなく、商品に関する豊富な関連情報をアプリで提供することで、顧客の購買判断をサポートできるようにしているところです。これらを実現するため、商品情報・店舗情報・在庫情報・購買情報、さらには顧客の属性データなど多種多様なデータを連携しながら、その内容も最新の状態を保つようにメンテナンスされていることが推測されます。

便利な顧客サービスを用意し、常に適切な情報を提供するには、組織的・戦略的なデータ整備からしっかりと取り組む必要があることは容易に想像できます。
米国の小売企業がその巨大な規模にも関わらず各種データ整備に地道に取り組み、アウトプットにつなげていることが、これらのアプリ上で提供されている情報を見るだけでも実感することができました。

続く次回のブログでは、こうした米国での取り組みから感じた「日本と米国のデジタルの位置づけの違い」についてお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに!

 (次回へ続きます)

※当記事は4回連載です。
Vol.1はこちらからご覧いただけます。
Vol.2はこちらからご覧いただけます。
Vol.4はこちらからご覧いただけます。(近日更新予定)

この記事を書いている人
中里昇吾 / ショピモ事業部 部長
サイバーエージェント、マイクロアドなどを経て、2017年にマーケティング・グラビティへ入社。現在はショピモ事業部のリーダーとして、営業・マーケティングチーム全体を束ねる。さらに個人でも、「荒川102」という地域Webメディアを主宰するなどマルチに活躍中。

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