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マーケティングLab

2019.05.07

【連載Vol.5】デジタルはスーパーマーケットを救うのか?「客数減」「人手不足」への処方箋

新しいモデルを実現する参考事例~「KARTE」と「QON

前回まで述べてきたような、新しいモデルを実現するために必要な「優良顧客化」と「インフルエンサー化」、そして「多次元接点による良質なコミュニケーション」。その参考になる事例はいくつかありますが、次の2つは特に優れていると感じています。

Plaid社のKARTE(カルテ/外部サイト)はツール間における断片的なユーザー情報でなく、サイト内外のユーザーの多様な行動を一元化し、ユーザーの行動を文脈的に捉えながら、一人ひとりに合わせた顧客体験を実現するためのプラットフォームです。適切なタイミングで行われる顧客目線の顧客体験、それを可能にするためのリアルタイムでのユーザー体験の可視化と一元化がPlaid社のテクノロジーとなります。

保険、金融、化粧品をはじめ消費財メーカーなどで多数の導入事例がありますが、特に購入頻度や消費頻度が少なく、ものによっては買い替えやサービスの乗り換えなどが発生する商品やサービスに向いているツールです。商品と接する時間以外の行動も見据えながら顧客一人ひとりと向き合い、日頃の関係性を良好に保つことによりLTVを上げていくためのツールとしてKARTEは期待されています。

課題があるとすれば、ユニークIDを付与できる既存顧客に向けたサービス設計となっているため、新規顧客を獲得するには別の手法を検討する必要があることでしょう。
また、顧客体験が可視化されているとはいえ、あくまでKARTEはプラットフォームの提供に徹しているため、顧客へのアプローチにおける最適解は利用者が自ら仮説を立てつつ検証を繰り返し、ベストプラクティスを積み上げていく必要があります。

QON(クオン/外部サイト)のネットワークソリューションも大変参考になります。QONは「消費者コミュニティ」の活性化を独自メソッド(呼掛・役割・報酬・進行)により実現。繋がった消費者の「対話欲求」や「情報欲求」をコントロールしながら、商品やサービスなどブランド育成に寄与するサービスを提供しています。

売上貢献だけでなく、商品やサービスのブラッシュアップや新機軸の切り口の創出を、消費者との共創により活性化させることを目指しており、ファン化のメカニズム解明やファン化に有効なイベントの特定、インフルエンサーとして追随者に影響を与える発言の特定や追随者への最適な拡散など4つの特許技術を用いて実現しています。
今のところ参加しているのは消費財メーカーが多いようですが、大事なポイントは「優良顧客化のメソッド」と「需要を創造するメソッド」を、テクノロジーを活用して最適化しているところでしょう。前述の平野氏が提言されている「1%の優良顧客」を捉え育み、他者への影響にまで寄与することができれば大いにメリットがあります。また、共創によるイノベーションもメーカーニーズを捉えていると思います。

逆に課題は、コミュニティごとに効果を最大化させるために必要なユーザー数を十分に確保できるどうか、また、常にアプローチ可能なアクティブユーザーとして対話できるかどうかという点でしょう。さらにKARTEの課題とも共通するところですが、未顧客を顧客化するサービスではありませんので、他のソリューションとの組み合わせで絵を描くことが求められます。

ダイレクトマーケティングにAIは必須になる

 ダイレクトマーケティングの在り方については、CRMソリューションズがCRM・ダイレクトマーケティング用語集の中で端的にまとめています。
ダイレクトマーケティングの基本的な考え方は、『「適切な商品」を「適切な客」に「適切な時」に「適切な方法」で提供する』こと。それを実現させるための留意点が下記となります。

 ・顧客が欲しがっている商品を提供する
・お仕着せの商品を提供しない
・自社にとって誰が顧客なのかはっきりさせる
・今の売上高だけでなく、顧客の潜在購買力を把握した上で関係を続ける
・顧客を差別化することにより、過剰サービスや不足サービスに陥らないようにする
・見込のない客(反応がない客)を早く見つけて、優良客に労力を割くようにする
・顧客が欲しがっている時にコミュニケーションする
・顧客が望んでいるタイミングでコミュニケーションする
・保証期間が切れるタイミングでコミュニケーションする
・顧客に応じてオファーを変える
・顧客にマッチした情報を送る 

上記の2つめにある「お仕着せの商品を提供しない」は特に重要です。お仕着せの鬱陶しさから顧客が離れてしまうケースも多いと思いますが、『「適切な商品」を「適切な客」に「適切な時」に「適切な方法」で提供する』ために、今後はAI技術の活用が必須になろうかと思います。

そのAI活用について、先日の日本経済新聞で興味深い記事を見つけました。タイトルは「AI、データ不足6割 主要100社に聞く」(2018930日付)です。
(以下、全文となります)

日本の主要企業の6割が人工知能(AI)運用に欠かせないデータ活用で課題を抱えていることが分かった。製品やサービスの開発、事業開拓などAIの用途は新たな分野に広がりつつある。だが必要なデータが不足していたり、データ形式が不ぞろいで使えなかったりと、AIの導入に戸惑う事例も多い。欧米を中心に企業のAI活用が急拡大するなか、「動かないAI」が増え続ければ世界競争に出遅れかねない。

 

壁になったのが保管データの形式違いだ。過去2千枚超の工事画像などをもとに地質診断のコツをAIに教え込もうとしたが、保存形態が「エクセル」や「PDF」などバラバラ。担当者が画像や資料をスキャンし、手作業で数値を入力し直す必要があった。

 

AIの精度を高め、期待通り動かすには、膨大なデータを集めてその意味を学ばせる作業が欠かせない。しかし調査では「データはあるが使えない」企業が35%に上り「収集できていない」も2割を占めた。「どんなデータが必要か分からない」も含め6割の企業がAI導入に悩む。

 

背景にあるのはペーパーレス化の遅れや言語などの問題だ。AI学習用のデータ加工は自動化が難しく、入力や形式の統一など人海戦術に頼る部分が多い。英語が通じるインドやフィリピンに大量のデータ処理を委託してきた欧米勢に比べ、日本企業はこうした「前工程」で腐心する。

 AIによるマッチング精度が低く、AI技術の発展/実用化に遅れている日本は、世界規模の英語圏とは環境が異なり、消費者の購買意思決定に至る根拠として考えられるいくつもの要因を日本語でかつ日本人により解明、さらにいくつもの要因の中で重みづけも行いながら技術の精度を高めていかなければいけません。
そして何より消費行動を理解すべく、データを取捨選択の上で見極め蓄積し解明することが求められており、食品流通に関わる身としては改めて日本人特有の食文化を踏まえた消費者理解の重要性を感じています。

 (次回へ続きます)

※当記事は6回連載です。
Vol.1はこちらからご覧いただけます。
Vol.2はこちらからご覧いただけます。
Vol.3はこちらからご覧いただけます。
Vol.4はこちらからご覧いただけます。
Vol.6はこちらからご覧いただけます。

この記事を書いている人
米田敬太朗 / 調査分析部 部長
生活協同組合コープさっぽろでマーケティング実務に携わり、2017年にマーケティング・グラビティに入社、POSデータやパネルデータ分析に基づいた小売業界の戦略立案に取り組む。

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