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マーケティングLab

2019.04.23

【連載Vol.4】デジタルはスーパーマーケットを救うのか?「客数減」「人手不足」への処方箋

パートさんはもっとも優秀なインフルエンサー

もう1つ大事なことは、優良顧客がインフルエンサーとして周囲の人たち(追随者)に影響を与えていくパワーです。食品小売のインフルエンサーとして、もっともふさわしいのはその店舗の従業員であり、特にその商圏で顧客と共に住まうパートさんです。パートさんはその店舗の優良顧客でもある場合が多く、パートさんと共に、顧客とそれぞれの接点における「体験」を創り出していくことが大事になると考えます。

ファン化に関して、もう1つ参考になるのが東洋経済ONLINEでも紹介された、大手食品メーカー・カゴメの事例(外部サイト)です。同社では個人株主を「ファン株主」と呼び、「カゴメ製品を非株主の10倍購入する」というファン株主に対して株主優待のほか、工場や自社菜園の見学会、社長を囲む座談会、さらには株主専用のメールマガジン「カゴメール」を活用してさまざまな情報を発信。カゴメの全売上高のうち約3割を、こうしたファン株主など上位2.5%のコアな消費者が占めており、カゴメという企業や商品に愛着を持ってもらう個人株主の拡大に努めているそうです。
また個人株主から意見を日々伺うことで、個人の関心事や消費トレンドの変化などを捉える機会として位置付けています。このような「ファンマーケティング」の取り組みが商品づくりに留まらず、カゴメの経営そのものに活かされているのです。

「マーケティングとは愛である」

私の元ボスでもある、故・水口健次先生は著書の「マーケティング戦略の実際」(日経文庫)(外部サイト)の中で、

「マーケティングとは“愛”です。もっとおいしいものを食べたい、もっと楽しいことに出会いたい。もっとスマートに生きたい。すべての人がそう願い、そう望んでいる。それが、人間の願望です。マーケティングはこの願望に応えようとする企業の活動です」

と定義しています。マーケティングの本質は人のためにあり、豊かな生活を実現させるための重要な活動とする考え方です。

リアル店舗がお客様に対して、そのような愛あるマーケティングをどう準備するか。その体系を「これまでの考え方」と比較しながら、以下のように再定義しながら整理してみました。

従来のバリューチェーン:一方通行で川上と川下が存在する


(出所:マイケル・E・ポーター「競争優位の戦略」「国の競争優位」)

■水口健次が提唱した関与者モデル:事業者とショッパー、ユーザーが並列

(出所:JMR生活総研ホームページ)

■米田が考える新しいモデル:生活者を中心に据え、影響者・優良顧客と事業者がともに価値観を受発信しあい、次第に準拠者(追随者)へと浸透させることでサービスを一般化/標準化する

 ・小売(リアル店舗)は集客した顧客への接客力(サービス力)をさらに高めるべく顧客との対話を重視
・対話力を身に着けた小売は、顧客との共感により生み出される価値をメーカーや卸売と共有
・価値を求める顧客を満足させるため小売、メーカー、卸売が優良顧客づくりで協業する
・優良顧客づくりに努める小売を通してメーカーは顧客とつながり、顧客との対話と共感により商品力を向上させる
・集客した顧客の満足を持続させるため、卸売はメーカーの商品力を支えにしながら顧客が求める品揃えを実現する
・品揃力により優良顧客を全方位(カテゴリマネジメント)で集客し、卸売はさらに小売の集客力をサポートする
・小売、メーカー、卸売の協業によって最適化や効率化の取り組みをより活発化させ、オペレーション力の向上を図る
(→私たちマーケティング・グラビティは、流通構造の中で協業による価値実現に寄与する)

当社の事業は、リアル店舗を起点として「生活者のお買物体験をより豊かにするためのサービス開発」をベースとしていますが、これはリアル店舗の本質的課題に寄与することを目的にしたものです。当社との取り組みによって、店舗を利用する顧客のうち最も影響力をもつ「影響者(優良顧客)」を捉えてインフルエンサー化。さらに「準拠者(追随者)」にまで価値を伝搬するサービスを創出し、流通構造の一員として寄与していきたいと考えています。

小売にとって、敵にも味方にもなる「地域の影響者=オピニオンリーダー」(店舗の優良顧客になり得る生活者)を、いかにその小売や店舗の味方(ファン)として定着化させ、商圏内にある競合店への流出を防いでいくか。それを考えることは、“客数減”への有効な対策の1つでしょう。
また、弊社のサービスがお客様に豊かな買物体験を提供し、日々の生活をより満足させるサービスと評価いただくことができれば、影響者から周囲の準拠者に伝搬されることによってその価値が伝わった瞬間、それは競合と差別化できるサービスとして店舗で根付いていくはずです。

当社では、こうした影響者(優良顧客)を組織化する生活者パネルとインフルエンサー化について、以下のように考えています。

■生活者(影響者)パネルの組織化

徹底した生活者理解に加えて、インフルエンサー化を目的にしたパネル(調査対象者)を店舗スタッフも巻き込んで組織化。パネルから得られるデータ解釈の確度を高め、小売メーカーに対するパネルの依存度を高める。

■需要創造/予測(AI活用)のメソッド開発

【Step1】ペルソナ
ライフステージ/ライフスタイル(末子年齢取得)、消費意識(他チャネル含む)や価値観を捉える
⇒都市部だけでなく地域色を鮮明にした全国規模の生活者理解に取り組む

【Step2】来店動機
天気(気温)、販促計画、競合状況を捉え、商圏内の未顧客/非顧客を明らかにする
⇒店舗への物理的・精神的距離を縮め、店舗送客施策との相乗効果を狙う

【Step3】購買意思
価格、商品、店頭展開方法、催事、購買順序、過去体験、五感刺激など購買に影響を与える因子を整理する
⇒購入に至る要因を捉え、ダイナミックプライシングの実用化に繋げる

【Step4】優良化
RFM(※1)の把握、売上構造因数分解、ランクごとに離反理由を把握
⇒ファン化のメソッドを捉えて施策に落とし込む
(※1) R(Recency)は最新購入日、F(Frequency)は購買頻度・回数、M(Monetary) は購買金額を意味し、この3つの指標で顧客を分類する分析手法。 

【Step5】C2C4B(※2)の実現
影響者のインフルエンサー化を目的とした“場”の設定
⇒顧客同士の対話の為のコミュニティをリアル/ネットの双方で提供し、顧客の声の施策化に取り組む
(※2) Consumer to Consumer for Businessの略で、お客様同士の拡散性により企業と繋ぐことを意味する。

【Step6~8】需要創造/予測メソッド
生産性向上など省人化、省力化とともに、需要創造を実現するメソッドの開発へ
⇒生活者と共に需要を“創る”取り組みを流通構造全体で進める
※これら需要創造/予測のメソッドやサービスを、テクノロジーを活用して実現しようとしているのが当社の特徴。

上記のようなモデルの実現を目指して、これまで述べてきたような「優良顧客化」と「インフルエンサー化」、「多次元接点による良質なコミュニケーション」をテーマにしたデジタル活用を考える場合、やはり中心に据えるべきは「事実データに基づいたアプローチ」。当社でも今、それぞれのメソッド開発を取引先の皆様の協力も仰ぎながら準備しているところです。

「データ・サイエンティストに学ぶ分析力」(ポール・ブラウン氏著/日経BP社)(外部サイト)では、ビックデータの中には「Sexy Data(魅力的なデータ)」と「Dirty Data(整合性を欠くデータ)」があると指摘されていますが、データビジネスを組み立てる上では、より影響度の高いデータを取捨選択する目利き力も重要です。

ちなみに、当連載の第1回で述べたとおり20192月度の全国食品小売業の売上結果は前年  比98.8% (全体)、97.8%(既存店)ではありますが、その理由として青果は昨年の相場高、今年は逆に相場安とその反動があったこと、さらには気温高によって鍋物が早々に売場縮小されたことなど原因が明らかな部分もありますので、今後は小売各社で対策を講じることでしょう。データに対して「厳しい現状」と悲観するよりも、事実を受け止め対策を講じることに前向きでありたいと思います。

(次回へ続きます)

※当記事は6回連載です。
Vol.1はこちらからご覧いただけます。
Vol.2はこちらからご覧いただけます。
Vol.3はこちらからご覧いただけます。
Vol.5はこちらからご覧いただけます。
Vol.6はこちらからご覧いただけます。

この記事を書いている人
米田敬太朗 / 調査分析部 部長
生活協同組合コープさっぽろでマーケティング実務に携わり、2017年にマーケティング・グラビティに入社、POSデータやパネルデータ分析に基づいた小売業界の戦略立案に取り組む。

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