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マーケティングLab

2019.04.16

【連載Vol.3】デジタルはスーパーマーケットを救うのか?「客数減」「人手不足」への処方箋

「客数減」が止まらない②~マスからダイレクトマーケティングへ

前回お話した優良顧客化についてですが、その前提となる考え方を学べる参考書や事例をご紹介します。

まずメーカー視点で大変参考となるのが、「潜在価値マーケティング」(平野淳著/幻冬舎)(外部サイト)
この本によれば、パレートの法則(「28の法則」とも呼ばれ、 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているという法則)を深掘りすると、トップ1%の顧客で全体の20%の売上をつくっていることがわかったそうです。

年間に多くの新商品を発売し、1品でも多く顧客に支持される商品を生み出そうとメーカー各社は苦労されていますが、著者の平野氏はそうした従来のマスマーケティングでなく、核となる顧客と深くダイレクトに繋がることが実は売り上げアップの近道と、その重要性を指摘しています。

また小売視点では、店舗が立地している足元商圏で同業態/異業態とのシェア競争を繰り広げる中、やはり近隣1km圏内の需要をできる限り全方位で取り込むことが重要となります。

顧客と多次元で繋がることでファン化を促す

さらに「小売再生―リアル店舗はメディアになる」(ダグ・スティーブンス著/プレジデント社)(外部サイト)では、小売店舗は「買物体験→経験価値」「買物体験の思い出としてのモノの提供」に徹し、オンラインでは提供しづらいリアル店舗だからこそできる人のぬくもりや、五感で体感することの喜びを提供することによってオンライン取引との差別化を図るべきと述べられています。

この考え方は決してリアル対ネットという単純な構図で語るべきでなく、顧客と多次元に渡る接点を持ち「繋がり時間」を共有することにより、それぞれの接点での顧客体験を通して全方位的に顧客の生活に関わることができ、その商品やサービス、ひいては店舗のファンになっていただくことができれば競争優位に立てる。そのように私は考えています(オイシックスの奥谷氏が提言した「顧客時間」も個人の生活を網羅的に捉える考え方ですが、スマホ普及前にはまだイメージが描きづらかったかもしれません)。

リアルとネット、移動販売などを別事業として位置づけ、KPIもそれぞれで設定して採算をモニタリングする企業が多い中、多様なチャネルで顧客と繋がることが競争優位に立つ大事なアプローチの1つと考えれば、それぞれの相互連携による相乗効果をもっと評価すべきでしょう(事実、私が以前にいた生協でも、店舗立地の商圏の方がそうでないエリアに比べると宅配利用率や利用金額が高いことを思い出しました)。

広域でネットスーパーを展開している小売事業者もいますが、今こそ店舗の足元エリアで優良顧客向け付加サービスとして、さらに追随者(ミドル/ライト層の優良顧客予備軍)を優良化するためのサービスとしてECを位置づける。そしてKPIは各チャネル共通の「足元商圏シェア」とすることで、核となる顧客獲得に繋がるものと考えています。

 ちなみにECによって、より広域商圏にまでアプローチできるという考え方もあるかもしれませんが、足元に店舗がない場合はリテールブランドが存在しないため、顧客の選択肢として位置づけられるには相当のコミュニケーションが必要となります。

また生協のように、在庫を持たないビジネスモデルかつ1人あたりの平均利用頻度が高い事業であれば、売上拡大と並行して効率化に取り組むことで利益面のメリットも得られるかと思いますが、「希薄な関係」「即日利用」「広域物流」とコストがかさむ広域ECモデルにおいて、採算性を求めることは容易でないでしょう。

 顧客の悩みを解決する買い物体験例「UCC上島珈琲」

 先日、流通ニュースに、UCC上島珈琲がEC(ONLINE)と店舗(OFFLINE)を通じて、個々の嗜好に合わせたコーヒーを提案するO2Oプラットフォームサービス「My COFFEE STYLE」を開始するとの記事(外部サイト)が掲載されていました。

コーヒーの好みはなかなか表現しづらいのが悩みですが、このサービスでは顧客がテイスティングキットを使い、自身の嗜好をスマートフォンアプリから登録することで、コク味わいによる4象限の「コーヒーマップ」にあてはめて可視化。その味覚評価データを基に、パーソナライズされたコーヒー体験をECや店舗で提供してくれます。
さらに、16種類のコーヒー豆から嗜好に合ったものを自宅へ定期配送したり、リアル店舗で対面しながらコーヒー豆の挽き売りをしたりといったサービスも準備しているそうです。

同様にスーパーマーケットを利用する生活者の中にも、たとえば「食材の旬や選び方がわからない」「調理方法、アレンジ、盛り付け、保存、余った食材の活用法がわからない」など、何かしらの悩みを抱えながら買い物されている方はきっと多いのではないでしょうか。
また、「コミュニティの場として利用できる店」「週末に家族といっしょに過ごしたい店(場)」「従業員と顔の見える関係性が持てる店」など目的に応じた、自分にぴったりの店がなかなか見つからないという生活者も多いでしょう。そうした悩みや要望を、店内外での体験を通じて解決/実現できるようなしくみをつくること。それが店舗のファン化(優良顧客化)につながっていくと考えています。

(次回へ続きます)

※当記事は6回連載です(次回は4月23日更新予定)。
Vol.1はこちらからご覧いただけます。
Vol.2はこちらからご覧いただけます。

この記事を書いている人
米田敬太朗 / 調査分析部 部長
生活協同組合コープさっぽろでマーケティング実務に携わり、2017年にマーケティング・グラビティに入社、POSデータやパネルデータ分析に基づいた小売業界の戦略立案に取り組む。

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